虹のブランコ#5

詩や言葉で交流

わたしは学校からおはなしの会のご依頼をいただくと、必ずプログラムに入れてきたことがあります。それは、テーマにそった本の紹介、子どもたちと詩をクイズなどにして楽しむ時間、そして本を持たずに子どもたちにお話をとどけるストーリーテリングです。中でもちょっと一息ついて、子どもたちと詩や言葉遊びの本を使って交流するのは、とても楽しい時間です。

わたしが、はじめのから最も利用させてもらっているのが、詩人くどうなおこさんの『のはらうた』です。これは、クイズにして楽しみます。

「みなさん。野原にはどんな動物や虫がすんでいますか。教えてください」。すると、たくさんの動物や虫の名前があがります。「それでは、わたしがこれから詩を読みますが、なんとこれは、動物や虫がつくった詩なんです。誰が作ったか当ててください。あ、言っておきますが、最後まで聞いてから手をあげること。はいと声を出した人には当てません」こう断ってから、始めます。

「おう なつだぜ おれは げんきだぜ あまりちかよるな おれの こころも かまも どきどきするほどひかってるぜ(後略)」

さて、読者のみなさんはおわかりになりましたか。これは一番の人気者、かまきりりゅうじ君です。そう!詩人にとってはみな、この宇宙の仲間なのです。このクイズのいいところは、本の好きな子が一番の解答者になるのではなく、むしろ本なんか読まずに外で元気に遊び、虫などをよく観察している子どもが、実に楽しそうに答えてくれるところです。難問を答え、周りの仲間から「すごい」と認められた子どもは本当にうれしそうです。

 

担任の先生が、この会のあと、「のはらうた」に載っているほかの詩を声に出して読んでくれたことがありました。

その後、それぞれが好きな主人公になって詩を書く遊び「またの名は○○ごっこ」が大流行しました。

わたしのお店にも、親から「うちの子がししゅうが欲しい。ちいさいおうち書店にいけばあるというのですが、どの本かわかります?」と不審そうな声で電話がかかってくることがあり、思わずニッコリしてしまいます。

病院のベット脇でもこの本ならすぐ遊べます。試してみると、付添いのおとうさんが夢中で答え、ベットの中で息子さんは「おとうさんすごい!」と尊敬のまなざしで見あげていました。

わたしの所属する「本と発達を考える会」のメンバーが最近よく使う詩の本は『かさぶたってどんなぶた』(小池昌代/詩 スズキコージ/絵 あかね書房 1.800円+税)というちょっと奇妙な名前の絵本です。詩人小池昌代さんが集めた詩が18編。思いっきり楽しい遊ぶ言葉が本の中で飛び跳ねています。わたしたちはこれを大きな紙に書き、子どもたちと暗唱したり、ペアになって交互に読んだりして楽しみます。

メンバーそれぞれに、得意な詩があり、その人が声に出して読むと、急に日本語が生き生きと動きだします。じっと座って聞くのが得意じゃなさそうな子がうれしそうに声に出して読んだり、体をゆすりながら聞いて、クスクス笑ったりするのを見ていると、子どもたちに響きのよい楽しい日本語をたくさん届けたいなあと思います。

 

ⓒ版画のはらうたⅠ
ⓒ版画のはらうたⅠ

「版画のはらうた」

工藤直子とのはらみんな/詩 ほてはまたかし/画 童話屋 1.300円+税

『のはらうた』は1984年に第1作が発売され、今年でちょうど30年。『版画のはらうた』は、この詩が大好きなほてはまさんが、7年かけてつくった版画を絵本にまとめたものです。この他に、英語版、かるた版など関連する本は17種類。今月発売された『あっぱれのはらうた』は、のはらむらの詩人24人が総出演です。