虹のブランコ #9

障害児のおはなし会

 わたしが、所属している「本と子どもの発達を考える会」が大切にしている活動の一つに、「小学校の特別支援学級での読み聞かせ」があります。2010年に始まったこのプログラムは、松本市内の3校の協力のもと、担任の先生と綿密に打ち合わせをするところから始まりました。

 

 知的障害児、情緒障害児と一緒のおはなし会をご希望だったので、どんな障害のある子どもたちでも、「あー、この絵本おもしろかった」「楽しかった!」と思ってもらえるようなプログラムが必要になりました。そこで担当者は毎回、「色」「音」「言葉」などのテーマを考え、それに沿って本を選びました。

 

 中でも大切にしたのは、見て分かりやすいことや言葉のリズムがよく覚えやすいこと。それに加え、子ども自身がおはなし会に参加しているという気持ちになれるように復唱したり、クイズ形式にしたりと集中が途切れないような配慮が話し合われました。

 

 名作といわれる絵本も、ちょっとした工夫でより楽しめることも分かってきました。その代表格が「あおくんときいろちゃん」です。世界的なデザイナーのつくった極めてデザイン的なこの絵本の登場人物は、色の付いたちぎった紙。あおくんやきいろちゃんなどとして動き、物語が展開していきます。

 

 絵が人や物の形をしていないことや、見開きで2場面あるページが多いため、見ている子がどこを読んでいるのか分からず、混乱するのではないかという意見が出ました。そこで試しに、普段は聞き手の邪魔になるのであまりやらない指さしをして「あおくんです」と読んでみました。効果は抜群で子どもたちは最後まで画面にくぎ付け。先生たちからも「この本はすごい!どんな子も話が進むにつれ、集中して聞いていました」との感想が出ました。

 

 このように試行錯誤していますが、時には失敗もあります。教室では、黒板の掲示物や遊具を上手に片付けておかないと、それが気になっておはなしに集中できない子も多いのです。また普通学級では、おはなし会のときは直接床に座ることが多いのですが、特別支援学級では椅子に座った方が落ち着きました。

 

 わたしは、このプログラムの最後の会にお手伝いとして参加しました。進行はいつもの2人です。ワークショップ「たのしい絵本 たくさん読んだよ」と題して、ミニ本作りをしました。

 

 これまで読んだ本を思い出しながら、第1回で使った絵本を5冊並べ、クイズに答えます。正解すると、絵本の表紙のシールを貼ります。以降、2〜5回も同様にクイズに答えながらシールを貼ると、最後にすてきな手作り絵本ができあがります。このアイデアは、実に効果的でした。

 

 ちなみにこの日の会場は、いつもの教室ではなく学校の図書館。ここでも、司書の先生の全面的なご協力で楽しい仕掛けが用意されていました。図書館の書架にはこれまでに読んだ本があり、それを見つけるのです。そこには、何げなく折り紙でできた目印が…。それに気づき、本の場所を見つけた子どもは、自分で作った絵本と先生からもらった折り紙のメダルを大事そうに持ち、ニコニコ顔。2年間、本を読んできたことの確かな手ごたえをメンバーはかみしめていました。

 

 

「あおくんときいろちゃん」

 

レオ・レオーニ/作 藤田圭雄/訳 

至光社 1,200円+税

 

 グラフィックデザイナーで絵本作家の作者が、2人の孫に紙をちぎってお話ししたところから生まれた美しい絵本です。登場人物のあおくんときいろちゃんがページのどの場所に置かれるかでまったく色が違って見えるから不思議。混ざって黄緑になるところで、声を上げる子どももいます。