2021年3月読書会『イルカと少年の歌』

Ⓒイルカと少年の歌
Ⓒイルカと少年の歌

2021年3月9日 読書会

 『イルカと少年の歌~海をまもりたい~』

(エリザベス・レアード /著  石谷尚子 /訳

 評論社)

 

今回、取り上げた

『イルカと少年の歌~海をまもりたい~』

の物語の内容は…

 

―海に近づくな、と厳しく言われて育ったフィンが、ある日海に落ちてしまった。溺れる! と思ったが、なんと水の中で自由に動き回れることがわかる。フィンは、詩にも歌われた、イルカ族の乙女と漁師の間に生まれた子どもだったのだ。人間のイベントのせいでイルカに危機が迫っていることを知ったフィンは、勇気をふりしぼって立ち上がる。

紛争地帯の子どもを描き続けてきたレアードが、海洋汚染をとりあげた作品。―

 

(出版社紹介より)

 

少し特殊な設定の作品だったため、読み始めは設定に戸惑いながらも、

「母がイルカ?と最初は、びっくりした」

「イルカと人間の間に生まれた子というので、ちょっとひいてしまったが、伝説に基づくと知りやや納得」

「異類婚姻譚は世界中に存在する。この物語も、その言い伝えを上手に使っている」

「異類婚姻譚なども、上手に物語の中に組み入れている」

「イルカ族と漁師の子どもというファンタジーの要素をとりいれる事で、重たくなりすぎず読めた」

などなど、読むうちに納得したり効果的だと感じた人が多かったようです。

 

また、人間とイルカという設定から、映画を思い出したという人も何人かいて

『フリー・ウィリー』『フリッパー』『フィオナの海』『グラン・ブルー』などの映画の名前が挙がりました。

 

環境問題について、子どもにもわかるように書いてあるというところは、

みなさん高く評価していて

「本の見た目もさわやかで、子どもが興味をもてる題材がうまくもりこんである」

「テーマがあって、それを、子どもにわかりやすく書いた作品だと思う。」

「環境問題について、まず知ること、そして事実を知らせる事が大事だと感じた。深刻になりすぎず、子どもたちに大切なことを伝えたかったのかな」

「海洋プラスチック問題を子どもたちに伝えたいという作者の意図が感じられる作品」

といった感想を聴くことができました。

 

また、

「孤立していたフィンが、周りを巻き込んで海洋保護に繋げていくのはいい話ですが、そんなに簡単にはいかない、と思い他の本も読んでみた。あとがきを読んで、海洋汚染について書かずにはいられなかったとのこと。教師の経験を通じて、子どもの力を強く信じていることが伝わってきた」

「同じ作者の『ぼくたちの砦』『路上のヒーロー』『戦場のオレンジ』など大変シリアスな作品を読んだ後だったので、それに比べると、環境破壊というテーマを子どもたちに、わかりやすく伝えたいという意図が全面的に出ている作品だと思う。」

など、作者の他の作品と比較したり、執筆の動機などに触れている人もいて

テーマ性の強い作品ならではだなと感じました。

 

主人公フィンのキャラクターについては、

「気弱な主人公フィンが突然発言が変わったのでびっくりした」とか

「パーティーにお呼ばれせず、窓からのぞいているフィンの態度がいや。導入の部分が、視点があちこちな気がする」などと、なじみにくかったという意見もありましたが、

「子ども5人が均等に役割を与えられているところが映像をイメージしているよう」

「少年少女がいきいきしていて、最後に幸せな結末がまっているところがいい。」

「5人の子どもは人種もさまざまで、ヒーローがでてこない少年少女の群像劇だなと感じた」など

フィンだけではなく、周りの子どもたちも含めての群像劇として受け入れている方が多かったようです。

 

 

まずは、大人が環境問題について事実を知ること。

それを、日々の生活の中でどういかし、子どもたちに、わかりやすく伝えることが重要だということを、改めて確認できた本でした。