6月の1冊は『王の祭り』(小川英子/著 ゴブリン書房)でした。
今回のレポーターは店長が担当。
■作者について・作品について
■また、歴史的史実を織り込んだファンタジーには重要になってくる時代的背景を理解するために、物語の登場人物のモデルとなった実在する人物について
■物語を整理するために各章ごとに印象に残った事柄・ことばについて
という視点でのレポートとなりました。
参加者の感想
まず、なんといっても「おもしろかった!」という声が多数で
・歴史の題材の物語はあまり得意ではないと思っていたが、この本はとても面白かった。
・ファンタジーの良さが出ている。うそっこってだいじ!
・歴史好きが喜ぶだろうなぁ
というように、歴史/ファンタジー両方の魅力を兼ね備えた作品という印象です。
また
・大きな歴史の中で書かれていない庶民の生活を書いてあり好感を持った。
という意見もあり、細やかな描写が物語を豊かなものにしていたのではと思います。
・高校時代の教科書にあった世界史年表に、日本史年表が対照してついているものをとってあったので、今回も本と併せて読んだ。
・エリザベスはヴァージン・クィーンでいろいろ映画の題材にもなっている。
・信長の描き方が新鮮でいきいきと感じられた。
・エリザベス・信長が王としての風格がありかっこいいなぁと思った。
などなど、歴史や実在の人物についての理解を深めたという方も多くいました。
・(自分は面白かったし)エンターテイメントの作品だが、好き嫌いがはっきり分かれる作品かもしれない
という意見も。
・若い貴族、男装の護衛官など「ベルサイユのばら」を連想した
という方もいました。
Aさんの
・いろいろな時代にいろいろな人がいるという時空を超えた楽しさがある。時代の雰囲気も良く出ているしファンタジーの良さが感じられる作品
という意見に賛同された方が多かったのではないかしら。
シェイクスピアについて言及された方も多く
・古典のシェイクスピアをうまく使っている。
・昔からお芝居が好きだったのでシェイクスピアの4大悲劇などが物語にうまく取り入れられていて楽しめた。
・シェイクスピアの『真夏の夜の夢』をしっかり読みこみたいなぁと思った。
・パックはかわいいし、すぐ自分の言ったことを忘れちゃうのも魅力だが薄気味悪い。
・ハムネットのセリフは「ロックしている」
など、キャラクターについての感想から
・シェイクスピアをよく知っている作家だなぁと思う。よく知られているのにわからないことがいっぱいある作家は面白い物語になりえるのでは。
というシェイクスピアについて考察される方もいました。
シェイクスピア以外にも、過去の偉大な作家に注目したお話を読んでいくのも面白そうです。
・パックというイギリスの妖精に日本の白狐が、願花を探すのに力を貸すというところがおもしろい。
というように、異なる国が交じり合うファンタジーならではの楽しみも。
またウィルの父親の職業に注目し
・ウィルの父親が皮手袋の職人で、女王様に献上する手袋にわざわざ新品ではなく古色をつけるというところが、イギリスらしくておもしろかった。
・父親が、手袋をつくるのに、一番必要なのは想像力だといいきるところもおもしろい。
という方もいました。
また、イタリアに住んでいたことのある方から
・古色が好まれるヨーロッパ文化だが、イタリア人は皮についてはイギリスのことをあまり認めていない。庭園の造りなどはイタリア人も尊敬しているのだが……
という興味深いお話もありました。
・学校図書館の司書をしていると、すぐにこれは子どもに読めるかなぁと考えてしまう。小学生には人物が複雑でわかりにくいかなぁ。群像劇として書いたとあったが、場面があちこちに飛ぶのでちょっと落ち着かない。
という意見も出ました。確かに、大人には読みごたえがあり楽しかったのですが、小学生だと少し難しいでしょうか。
歴史の折り込まれたファンタジーなので、あらかじめ多少の知識があった方が、もっと楽しめるかもしれないとも思いますが、
店長が「自分の中の子どもが喜んでいるかで、子どもに勧めるかどうかを決めている」と話していて、そういう考え方もあるなと思いました。