2022年3月読書会レポート『博物館の少女』

Ⓒ博物館の少女
Ⓒ博物館の少女

新型コロナ感染拡大の影響で、2月の読書会が中止になったため、

1カ月遅れで、本来は2月の予定だった『博物館の少女 怪異研究事始め』(富安陽子/著 偕成社)を3月の読書会で取り上げることになりました。

 

レポーターのHさんは、作者の略歴、作品を読み解くキーワードについて丹念に調べてきてくださり、参加者一同、感心してしまいました。

 

 

明治時代の文明開化の背景、実在下絵師河鍋暁斎について、

東京博物館が出来るまでのエピソードの資料を用意して説明。

 

中でも、二代目館長の田中芳男が飯田市出身だということで、

作品をより身近に感じた人もいました。

 

Hさんは、作品の展開に大きく関係する『黒手匣』の行方と事件の真相についても、興味深い資料を用意してくれました。

 

 

(余談ですが……作者の富安さんにこのレポートを渡したところ、これだけ調べるのにどれだけ時間を使ってくださったのかと、頭が下がる思いというお言葉をいただきました!)

 

参加者の感想

 

〇面白かった。明治生まれの祖母から聞いた妖怪話を思い出した。

「玄藩ぎつね」伝説など、富安さんの世界に通じるものがある。

早く続きが読みたい。

 

〇小学校の図書館では、富安さんの本は抜群に人気がある。

ただ、この作品はもう少し上の層にむけて書かれているのかな?

博物館という実在のものがあるので、書くのは大変だろうなあと思う。

 

〇主人公イカルの顔があまりはっきり浮かんでこなかったので、挿絵に引っ張られた顔を想像しながら読んだ。

長い間温めた作品ときいているので、これから先が楽しみ。

 

〇とても面白かった。

公共図書館に勤めているのでYAコーナーに置きたい作品だ。今までの、富安ファンの子どもたちには、ちょっとむずかしいかな……

ホラーではなく、こういう切り口でミステリーをかけるのだなと感心した。

ロッシュさんのキャラクターが、ちょっと弱いと感じた。

匣がキーアイテムとして、ミステリアス。

 

〇子どもの頃から富安さんの本の大ファンです。いつも、あー楽しかったとなるが、この作品は、最後に切なさがある。

博物館の描写が、とても面白かった。

 

〇面白かった。死生観、古道具、かくれキリシタンの里など、興味深い内容に魅かれた。

おみつの動きがなぜか泣けて仕方がなかった。聖母マリアに抱かれたキリストが大人の顔をもっているというところと、おみつが繋がって見えた。

 

〇無条件に面白かった。河鍋暁斎の絵と『妖怪一家」シリーズの絵がつながった。

今までの、富安作品から、少し成長した読者に向けて書かれているのだと思う。「時をさまようタック」を彷彿とさせるところもあり、楽しかった。

 

〇テンポよく読めるが、小学生にはちょっと難しいかな。

トノさまイカル 続けるとトノサマガエル?

 

母が、子どもの頃にカッパを見たと言ったのを、突然思い出した。

 

〇実在の人物がたくさん登場するので、お話をつくるときに、たくさん制約があって大変だったろうなと思う。

 

……などなど色々な感想が。面白かった!続きを早く読みたい!とおっしゃる方が多い、魅力的な1冊でした。

この読書会の後の3月20日に、

塩尻エンパークで富安さんの講演会がありました。

講演会の前に富安さんと理論社と福音館の編集者の方が

ちいさいおうちに立ち寄ってくださって、

一緒に楽しくお話をすることが出来ました。

 

今後も富安さんの作品に注目していきたいと思っています。