2022年5月読書会レポート『ランペシカ』

Ⓒランペシカ
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5月の読書会の1冊は『ランペシカ』(菅野雪虫/著 講談社)でした。

 

今回のレポーターは、アイヌ文化に興味をもっているというIさん。

レポーターは初体験でしたが、見事にまとめて、わかりやすく解説していただきました。

アイヌについて、かなり詳しく調べてきてくれたので、作品の背景がよくわかりました。

 

北海道の先住民族で、日本語と系統の異なる言語。明治維新以降、アイヌ民族の土地は、日本の一部として、「北海道」という名になり、同化政策により、土地は取り上げられ、日本語を強要された、と聞くと、今のウクライナのことを、必然的に思い起こした方も多いのではないでしょうか。

 

作者の菅原雪虫さんは、この読書会で取り上げるのは2度目(1度目は、『天山の巫女ソニン』)です。

菅原さんが児童文学を書くとき注意していることは、「キャラクターを自分のテーマを語る道具にはしない。これは、大人が好きな子どもだな、と思うようなキャラクターはだしたくない」なのだそうです。

 

 

参加者の感想を一部ご紹介します。

 

■アイヌの物語は、日本のやおよろずの神より、もっと近いところに神がいると感じた。

 

■1,2を読んでないので、深く入りこめなかった。登場人物が多いので、相関図がついていたらいいなぁと思った。

 

■菅野さんの作品は初めて。3巻とも読んだがとても面白かった。

『チポロ』は児童文学の王道だと感じたけれど、あとの2巻は人間の暗部が照らし出され、人とは何か、人間らしさとはどういうことかという大きなテーマを感じた。明るくて楽しく誰からも愛されるというキャラクターでない人物が描かれている。

 

■今作から読むと重すぎるのでは?

ランペシカは魅力的な主人公だなと思った。チポロは、虐げられた子だが、おばあさんの育ての力がすごい。

 

■『ランペシカ』を読んで、ゲド戦記のテナーを思い出した。 

暗さを引き受けている存在。苦しいけど、寄り添ってくれる人もいるよ。という作者からのメッセージを感じた。

 

■『ランペシカ』しか読んでないのですが、あまりアイヌっぽさを感じなかった。みなさんのお話を聞いて、1・2巻も読めたらよかったなぁと思った。

 

■同じ著者の作品『天山の巫女ソニン』は、本当におもしろかった。この作品も、ランペシカがとても魅力的。

  

■小澤俊夫さんが、日本の昔話にどうしてもアイヌのお話を加えたいと言った意味が理解できる。もっといえば、日本は単一民族ではない。異民族が一緒に暮らすということを、真剣に考える必要がある。今、戦争状態にあり、どうしても、作品に戦争の影を投影して読んでしまう。

  

■相関図は、つけてもらえるとうれしい。

 

■シリーズの中で『ヤイレースーホ』が、一番よかった。アイヌにはなじみがなかったが、物語の内容だけでも面白く読めた。『ゲド戦記』が浮かんできた。

 

■ファンタジーのせいかアイヌの生活ぶりはあまり描かれていないような気がする。  レラの異能にひかれた。ランペシカを支えるイレシュの弟の存在が印象的だった。

  

■北海道というのは、北のアイヌを加えて生きるという意味でつけられた名前ではじめは『北加伊道』と書いた。

関連して『熱源』や『大地よ!アイヌの母神、宇梶静江自伝』など、アイヌにまつわる本をたくさん読んだ。

 

■アイヌの生活文化を取り入れているところ――神が動物の体を借りて、人の世界におりてくる。命あるものをいただく感謝の姿勢‥‥‥知らない事が多いアイヌの世界が舞台なので、主人公の激しい思いが、より表現しやすいのではないか。

 

■シリーズの中、今作しか読まず理解しにくいところがあった。

コタンの長が、「人の上に立つ自分が、人として未熟であったときのことを忘れてはいけない」と語った場面は印象に残った。今のうちに、既刊を読んで、次の巻を待ちたい。

 

 

『ランペシカ』は、『チポロ』『ヤイレスーホ』に次ぐシリーズ3作目の作品ですが、残念なことに『ヤレイスーホ』が現在品切れしています。

そのため、今作を初めて読んだ人は、おもしろいなと思っても、全巻通して読むことが出来ず残念だったという意見が多く出てしまいました。

 

もちろん、図書館では借りることが出来るのですが、

前の2冊を読まなくても楽しめる作品だと思いましたが、やはり『チポロ』を読書会に選ぶべきだったかもしれないというのが今回の反省点です。

 

とはいえ、今回も色々な意見を交わすことができ楽しい回になりました。

参加してくださったみなさま、ありがとうございました。