今月の読書会の様子をレポートいたします。
9月の本は『火狩りの王〈一〉春ノ火』(日向理恵子 /作 山田章博/絵 ほるぷ出版)でした。
今回はこの本の編集者であるSさんが出席されるという予告があったので、
みんな少し緊張して待機しましたが、体調不良ということで残念ながら欠席という事に。
いちばんドキドキしていたのはレポーターのWさんだったと思いますが…
落ち着いて、春ノ火の巻のあらすじを中心に丁寧にまとめてくれたので
それぞれの場面を思い出しながらじっくりと聞くことができました。
作者はこれまで「雨」のお話をたくさん書いていたので、その逆のモチーフである「火」を書いてみようということでこの本を書き始めたそうです。
それにしても「火狩り」「人体発火病原体」など、ちょっと思いつかない発想からの物語作りに期待を寄せて読んでみました
参加者それぞれの感想を述べてもらうと…
世界観やスケールの大きさ、火というテーマに着目した人も多く、
〇スケールが壮大で話も複雑だが、文体がしっかりしていたり、登場人物が魅力的に描かれていたので物語にひき込まれた。油百七と火華の描き方が特徴的だった
〇世界観がリアルに感じられ地に足がついたファンタジーとして面白かった
〇身近に火がない世界ってどんなものか思いを巡らせてみた。
〇火というテーマが、今、注目されているのだと思った。
という意見が多く聞かれました。
〇匂いの描写が印象に残った。中学生はあまり手にしないが50代の先生が面白いと言って読んでくれ、子どもにも勧めてくれている。
…7というような意見もあり、今回の参加者の多くは子どもよりも大人が読むというイメージを持った人が多いようです。
また、戦闘場面や死の描写について、引っかかる人が多く、苦手な人から面白く読んだ人まで様々な意見がありましたが、「ダークファンタジー」と定義された方が多かったです。
〇テーマには興味を持ったが戦闘の場面などが残虐すぎて読むのをやめたくなった。ダークファンタジーは苦手…
〇一言で言えばえぐい作品。36歳という世代はハリー・ポッターが1巻づつ発売されるのを楽しみに待っていた年代でもある。ダークファンタジーは子どもの本に必要なのか。世代間ギャップを感じる。
〇ここまで残虐になれるのかというところから、人間の本質について考えさせられた。
〇安心して子供たちに手渡せる本ではない。血なまぐさいダークファンタジー。イメージがぼんやりしている
子どもに手渡すのはためらうという方も多く、対象年齢については意見がわかれるところ。
同時に、そこにゲームとの関係性を指摘する声も多く
〇ポンポンと人が死んでいくゲームの世界が反映された物語。情報社会の産物か?
〇『雨ふる本屋』ではあまり心が動かなかったが、同じ作者のこの作品は物語として単純に面白かった。
近未来ではあるが古風なところもあり、テレビゲームの世界に近いものを感じ、そこが面白い。
新しさだけではなく、新旧、善悪が入り混じった世界観を楽しんだという意見も出ました。
〇古さと新しさが共存している。回収車の描写など面白かった。善と悪が入り混じっている。
〇火の意味や神族の存在はよくわからなかった。重すぎて読みすぎるのが大変。
…テレビゲームをしたことがある年代には面白い要素が詰まっていると思いますが、外国のファンタジーに親しんでいる人には同じファンタジーでも異質なものを感じるのでは…
流れ物の女火狩り、明楽が登場するあたりから物語がテンポよく進み、俄然面白くなっった。
火を使わない近未来の世界を想像することができれば、
その世界に入っていけると思いました。
実際は、ゲームを意識しているのか、どのように考えて対象年齢を設定したのかなど、編集者の方が出席してくださっていたら直接聞いてみたいところでしたが…今は、誰もが安全に楽しめるのが最優先事項なので、またいつかのお楽しみにしたいと思います。