7月の読書会は『かるいお姫さま』(ジョージ・マクドナルド/作 モーリス・センダック/絵 脇明子/訳 岩波書店)でした。
意外にもジョージ・マクドナルドをちいさいおうちの読書会で取り上げるのは初めて!
店長も話していましたが、初期の頃にネズビットは取り上げたのですが、マクドナルドは取り上げそびれたままだったのです。
名作古典のマクドナルドの作品ですが、昨年センダックの挿絵の新装丁で出版されたのを機に今回、みんなで読むことになりました。
レポーターのWさんからのレポートでは、マクドナルドとセンダックそれぞれの作品についてと2人の作家のつながり、またマクドナルドがいかに多くの作家に影響を与えたのかなどをまとめてくれてありました。また『かるいお姫さま』などマクドナルドの作品を翻訳者している脇明子さん(ご自身の著書の中でもマクドナルド作品について書かれています)の言葉なども取り上げて、作品の魅力について考察してくださいました。
参加者の感想
◆新装版の装丁の素晴らしさ
お話の内容についての感想はそれぞれでしたが、みなさん共通の感想は「装丁が美しい!!」でした。
「装丁がすてき」「装丁に心がこもっている」
「持っていたい本」「本を所有する喜びを感じる」「大事に持っていたい本」などなど…
「汚さないようにしたい」「コーヒーの一滴もこぼすものか!」という固い決意をされた方も(笑)
マクドナルドのお話とセンダックの挿絵の相乗効果を感じている方が多かったです。
…このような感想を聴くと、多くの人の目に留まり、実際手にとってもらう、所有したいと思わせるきっかけとして、装丁って本当に重要なのだなと改めて思います。
◆センダックの挿絵
・銅版画と思って見ていたのでペン画だったのに驚いた
・センダックのきもかわいい絵が最高だった
・センダックと言えば犬が有名だけど、今回は猫がとても良い!
・マクドナルドが見たらどう思ったのか…見せてみたかった
◆昔話のような寓話
・昔話のパターンを踏襲している
・昔話のような寓話のような話を久しぶりに読んだ
・昔話が苦手だけどユーモアや現代的な味付けがあると感じた
・昔話風だからか登場人物に共感ができない
……というように、昔話みたいだから読みやすかった人、昔ばなしが苦手だからとっつきにくかった人がいましたが、骨格がしっかりしたお話で、冷酷さ・滑稽さも感じる悲喜劇のような展開、翻訳の巧みさに助けられたという意見が多かったです。
特に王子さまの歌う歌が素晴らしく、翻訳のうまさを感じるという声があがりました。
◆共感や感情移入のしにくい設定/「かるい」お姫さまの成長
・きれいなのだろうけど共感できない
・よほどかわいいお姫さまなのだろうなとは思うけれど……
・「重さ」がない=思慮深さに欠けるというところに繋がるのが面白い
・重さの解釈が面白い
・王子さまの愛によって、お姫さまが成長していく
・王子さまと出会うことによってお姫さまは自分だけの世界・利己愛の世界から出ることができた
・身も心をフワフワと軽い現実離れしたお姫さまに「重さ」を与えることのできたのは、本当にお姫さまを愛した王子さまだけ
・お姫さまは傷つけることを知らない。人から怒られることがなく自分の世界しか見えない存在
・お姫さまのまわりにいる人たちは、お姫さまをわかろうとしたり愛そうとしたりしない。お姫さまの求められたのは「お姫さま」という役割だけであったように思える
…などなど
現実離れした登場人物ばかりのため、お姫さまをはじめ、王子さま、周りの人々…誰かに感情移入して読んだという人がほとんどいなかったというのも、今回の本の特徴かもしれません。
また、多くの人がこの物語は「お姫さまの成長」とおっしゃる方が多く、成長するお姫さまをどのように見守るのか、その成長をどのように捉えるか…というのがこの物語をどのように解釈するかという事になるのかもしれないな…と皆さんの感想を聞いて思いました。
比較的、幅広く本を読まれている参加者が多い中、今回はマクドナルドの作品を初めて読んだという方が何人もいらっしゃいました。ハードカバーで出版されていなかったという理由もありますが、マクドナルドの作品は意外と知らずに通り過ぎてしまう方が多いのかもしれません。
150年以上前に書かれている作品ですが、こうして改めて皆で読むことができたことに意義を感じました。