7月の1冊は
『ウィロビー・チェースのオオカミ』
(ジョーン エイキン/著 冨山房)でした。
いつものように、レポーターの詳細な解説からはじまりました。とても丁寧に調べてりあり、一同感心することしきり。
特に、「児童文学とは?」というエイキンの考え方を記した『子どもの本の書きかた』という資料は明解で、参加者全員に改めて子どもの文学の本質を考えさせてくれた。
◆児童文学とは?子どもの文学とは? エイキンの考え◆
ファンタジーにおいては、性格づけにそれほど力を入れなくてもよいということが一般
的に受け入れられている。神話や英雄伝説と同様、主人公は英雄であり、対立するのは
悪漢である。ファンタジーは率直に善悪を取扱い、それを黒白によってするどく、はっ
きりと描く。子どもたちは自然にこのことを楽しむし、ティーンエイジャーも同様のよ
うに思う。たぶん彼らは、ティーンエイジ小説に見られる微妙な影や、未解決な複雑さ
とは異なったものを見い出し、新鮮さを味わうだろう。
物語の結末は幸せなもの、あるいは悲しいものであるべきか?私の信じるところでは、
幸せなものであるべき。13 才、14 才までの子どもたちは、まだ悲しい結末を受け入れ
る用意ができていない。憂鬱な、または曖昧なものはなおさら受け入れがたい。昔話や
妖精物語では、正しいものが勝利を得るようになっている。やがてまもなく、物語の最
後で理性と徳が勝利を得るのは、事実を告げているというより原則を主張しているのだ
と彼らは理解するようになる。
以上「子どもの本の書きかた」ジョーン・エイキン から抜粋・要約
参加者の感想
〇シリーズの作り方がすごくうまいなあと感じた。主人公が、入れ子のように移り変わっていくさまは、見事だと思う。その他の作品は、これが、同じ人が書いたの?というくらい作風が違う。挿絵もイギリスの伝統のペン画が上手く使われている。ともかく無条件でおもしろい。さいごに、いろいろな出来事が、ピタリと収まるようにできていて、心地よい。
〇映像が浮かんでくるようなお話だ。家庭教師に、お湯をかけるボニーの大胆さにハラハラドキドキ。子どもが読んだら、もっとわくわくして読むんだろうなと思う。それぞれの場面に、きちんと、大事なキャラクターをもつ人物が配置され、悪役、子どもを助ける大人とはっきりかき分けられていて痛快。
〇エイキンは大好き。特に『しずくの首飾り』を読むと、ガサガサした心が修復する。
貧しくても誇り高い少女、イギリスの階級社会のありようなど、よく書けているなあと感じる。
〇悪い人は悪い。いい人はいいとはっきりしていて不思議な感じ。でも、好きな作品で、おもしろかった。『しずくの首飾り』は、すてきな世界だった。
〇昔のような雰囲気の作品。善人は善人。悪人は悪人と最後まで変わらない。物語の中で、二人の少女はいじらしく、しかもちゃんとたくましく成長している。『しずくの首飾り』は子どもたちに声にだして読んであげ、耳できいてもらいたい物語。
〇オオカミの話なのかな思い読みはじめた。ここまで悪い人がいるのかと思うような家庭教師。シルビアとボニーは立場が違うのに仲良くやっている。まるで、ジェットコースターに乗っているような、展開の早い話。エイキンは、学校に行かずに育ち、これだけの教養を身につけられるとは、驚き。イギリス社会は、独特な気がする。
〇おもしろかった。ガチョウと暮らしているサイモンが好き。
〇だだっと読めるお話。風景が浮かんでくる。こんなに、絵にかいたような悪者は、久しぶりに会った。おもしろかった!
〇物語の構成力がすばらしい。諸々の登場人物が適切に配置されていて、コマが上手に動く感じが心地よい。いつでもあきらめないボニーに力をもらった。収まるところに、きちっと収まり、とてもいいお話だった。昔ばなしにも通ずるところがある
〇読み始めたら止まらない、本当に楽しい読書だった。シリーズがこんなにたくさんあって、びっくり!
〇つぎは、どうなる?とワクワクしながら読める。今回古典をとりあげたが、子どもの本の本質にせまるレポートで、よかったなあと感じている。ひとつだけ、お話したいのは、「ロマ」(ジプシーから名称変更)について、エイキンの『ささやき山の秘密』にも出てくる。以前読んだ『スターガール』にも出てきて、とても、興味をもった。
読書は、知らないことを教えてくれ、いろいろなところに、興味を広げてくれる。
〇今回初参加の高校生の感想
読書会のレポーターの掘り下げ方が深いなと思った。読書会は、はじめてだが、みんな明るくて楽しい!『秘密の花園』以来、児童文学にふれてこなかったが、この本はとても面白かった。
3つの場面が、印象に残りワクワクした。
① シルビアとグリムショーとの汽車の中での出会いの場面。
シルビアのひもじさが伝わり、ドキドキした。
② ボニーとシルビアのスケートのシーン。
今にもオオカミに襲われるのではとハラハラした。
③ ジェームスとボニー、シルビアと秘密の通路を見つけたところがわくわくして楽しかった。
余談ですが‥‥‥
ちいさいおうちの読書会に高校生が参加するのは、1年ぶりくらい。
いつも参加している大人たちは、若い人の参加や素直な読み方や感想が新鮮で、うれしくなって、にこにこしていました。
参加した高校生は、学校でも読書会を開いてみたいそうです。
みんなで応援してます!