前回、福音館書店刊行のインガルス一家の物語のシリーズをどんなに好きか…ということを少し(?)書きました。(よろしければそちらも併せてご覧ください)
このシリーズの中で私が特に好きなのは『長い冬』です。
日本で最初に訳されたローラの物語は『長い冬』だったそうです。その時の訳者の石田アヤさんが長い冬を生きぬいたインガルス一家と、長い戦争を生きぬいた日本人を重ね合わせて素晴らしい訳をし、当時の日本人の心に響いたのだと谷口由美子さんの講演会でうかがったことがあります。
今は戦時中ではありませんが、現在の日本はコロナ禍のもと、家の中で過ごすことを余儀なくされています…長い冬を耐え抜いたローラたちを思い出し、些細な出来事を楽しみ、小さな喜びを大切に日々を過ごしたい…と改めて思わせてくれます。今回、読み返してみて今こそ!多くの人々にこのお話を読んでほしいなと思いました。
初めてインガルス一家の物語シリーズ物語に出会ったの5歳の時から、インガルス一家が大好きになりすっかりこの物語に夢中でした。
しばらくは福音館書店から出ているシリーズを読み込んで楽しんでおり、その物語の続編にあたる岩波少年文庫のローラの物語のシリーズがあることを知りました…が、当時の少年文庫はとても大人っぽく、文字も小さかったので保育園児にはなかなか手が伸びませんでした。
数年後に満を持してこのシリーズを読み始めましたのですが、結果的には私にとってはその読み方が正解だったと思います。
なぜならば…特に『大草原の小さな町』以降、ローラの身に起こる出来事が就職・結婚…と展開が一気に大人の世界のものになっていくのです。
なので、今まで身近だったローラが一気に自分を置いて大人になっていってしまうので、私のように一家の一員になったつもりでいた幼い読み手にとっては、そのまま流れで読むよりも、ある程度こちら側も成長してからの方がお話を受け入れやすかったということもあります。
改めて読むと驚くのですが、ローラは15歳で先生になり18歳では結婚しているんですよね。一気にお話が進んでしまったように思っていましたが、子どもが大人になるのが早かった時代、子ども時代が終わったとたんに大人にならざるを得なかったのだなと思うと複雑な気持ちになります。
そして意外とネックだったのはローラたちの言葉使いの違い。これは訳し方の違いなのですが
インガルス一家物語を何度となく読み返して
「とうさん、かあさん」というよびかたが刷り込まれていたところからの「父ちゃん、母ちゃん」というよびかたはなかなかショック(笑)でした。英語のニュアンス的にはそちらの方が正しいようなので、大人になってからはさほど気にならなくなりましたが、当初はめちゃくちゃ戸惑いながら読んでいたのを覚えています。
(比較的、小さいころにこのシリーズに出会った人はぶつかる壁かもしれない…と思っているのですが、こういう経験されている方いらっしゃらないでしょうか?)
大人には一気読みを推奨したいですが、子どもが読む場合それぞれのタイミングで。少し間があいても、物語はずっとそこで待ってくれていますので焦らずに…(それが本の良いところでもありますね)
とはいえ、私の子どもの頃とは違い、岩波少年文庫のこのシリーズも格段に子どもも手によりやすい装丁になっています。
表紙絵はガース・ウィリアムズのカラーのイラスト。福音館書店のシリーズと雰囲気も同じで、ちゃんと同じシリーズという感じもします。
インガルス物語シリ―ズの4巻目『シルバーレイクの岸辺で』と、この『長い冬』が私の中ではローラの少女時代の物語として分類をされています。
子どもでもない大人でもないローラの視点で描いたこの2冊を続けて読むと、あちらのローラとこちらのローラが同じ人ということが自分の中で素直に理解できる…ような気がしています。
『長い冬』を読んでみて、無事に物語の世界に入ることができれば、きっとその後のお話も楽しめます
私物の少年文庫。何度も読んでボロボロです。
この頃は『長い冬』と『この楽しき日々』は上下巻でした!
長い長い物語シリーズです。読む年齢によって引っかかるところも受け取るものも違ってきます。
初めて読んだときはぴんと来なくて何となく読んでいたエピソードやセリフ、時代背景の描写などが後になってからしっくりきたり納得したりすることが私自身、何度もあります。
同じ物語の中で何度も新しい発見や出会いがあるのって素敵なことだと最近改めて思っています。