6才の時の私のヒーローはピッピでした。ピッピはこれまで出会ったことのないタイプの主人公でした。自由で強くて優しいピッピ!
赤毛のおさげや左右違う色の靴下に自分の足の2倍もある大きさの靴をはく…という個性的なビジュアルも、とってもかっこよく思えて、
私もさっそく左右違う色の靴下をはいてみたり、父の靴で後ろ向きにあるいてみたり、枕に足をのせて寝てみたり…
ピッピのフルネーム(ピッピロッタ・タベルシナジナ・カーテンアケタ・ヤマノハッカ・エフライムノムスメ・ナガクツシタ)を嬉々として暗記して、鼻高々に周りの大人に聞かせてみたり…
まわりにピッピのお話をしている友達がいなかったから、ピッピの話題で盛り上がることもできなかった分、ピッピをより親密に感じていたのかなと思います。
憧れたからといって、ピッピの真似をするのはとてもハードルが高い!
馬を持ち上げることもできないし、何度、期待をこめて確かめても
家の庭の木はレモネードの木にはなってくれません。
でも、ものはっけんかになったつもりで何かをさがしてみたり、
床におりてはいけないという遊びをしてみたり、地道なピッピ修行は続きます。
すっかりピッピに夢中な私に、父が誕生日に自作の『アッピ、ほいくえんへ』という絵本を作ってくれたことは、今でも大切な思い出です。…世界でにばんめにつよいおんなのこになりたかったらしいです、私(笑)
小さいころは、単純にピッピが大好きでピッピのように自由な存在に憧れていましたが、
ピッピを読み続けていると、ピッピの奥深い魅力がわかってきます。
まず、ピッピはとってもおおらかで優しい。
そして、独立していて自分を大事にしています。
トミーやアニカにも気前よくプレゼントをあげるし、豪快なお買い物も自分のものだけを買うなんてことはしません。
つかまえたどろぼうにだって、遊びに付き合ってくれたお礼としてちゃんと金貨をあげます。
大人の言われたルールにその通りに従うことはしませんが、ほかの子どもたちにもそれを強要したりはしません。
自分の容姿も境遇も理解していて、からかわれたり気の毒がられてもへいっちゃら。誰に何を言われても自分がぶれないところが素敵です。
私は『ピッピ、南の島へ』の最終章を読み終えると何とも言えない胸を締め付けられるような気持ちになります。
子どもの頃に読んだときは、ただただ「大好きなお話がここで終わってしまう」という漠然とした寂しさを感じていましたが、今ではそれだけではなく、最後の場面のピッピの姿に、明るく太陽のような存在だったピッピの中の陰の部分や孤独のようなものを感じずにはいられません。
楽しくて面白いエネルギーに満ちたピッピのお話に、ほんの少しだけ紛れ込む孤独感が、物語をより味わい深くしているのかなと思うのですが…みなさんはどのように読みましたか?
子どもの頃に読んだっきり…という方は今、読み返してみると新たな発見があるかもしれません。
私が小さいころはピッピのお話といえば大塚勇三さん/訳・桜井誠さん/絵の岩波書店のハードカバーでしたが
(今もまだあります。どうしても懐かしいからこれで読みたいという方はぜひそちらを~)
今はこんなに選択肢があるということも嬉しい限り。
ここに紹介したのは私が特にお勧めしたいものですが、
他の出版社からもピッピのお話は出ていますので
ぜひ、自分の好みに合った本を選んで、ピッピと出会って(再会して)ほしいです。